幸せ
私が見た幸せは、
両親への憎しみをひた隠しにして、自分が何なのかもう全くわからなくなって、何を考え何を欲しているかすら親の理想に浸され、やっと娘として認知してもらい、その状態で乗る車の中だ。
まるで愛されてるみたいだった。違うということを私だけが知っていた。
何か思っても口を閉じておくか、歌うかする。
時折訪れる無言、移り変わる景色が綺麗だった。
その時はきっと幸せだった。
あるいは。両親を初めて裏切って、散歩に出ている間に荷造りをして走って逃げて、そのまま飛行機に乗って家出した、数週間前のあのとき。
降り立つまで信じられなかった。きっとこんなことをしたら罰が当たって飛行機など落ちるのだと思っていた。
生かされていた。つけていたイヤホンから「私があなたといない時これまでになく幸せを感じる」という歌詞が流れてきた。
その通りだった。あの時はきっと幸せだった。
まだ涙する精神が残ってることに安心する。
今やろうとしていることがただの自傷であることにも安堵した。
ただひとしきり傷つけたあとに駅まで行ってみようかとも考えている。
飛び込むだけで全てが終わってしまうとは本当に奇妙な世の中に住んでいる、と思う。
幸せ。
心の底から幸せだと、あと一回でもいいから言いたい。
渇望が苦しい。乾いていることなど知らない方が良かったのかもしれない。
死ぬんだろうか。精神で死なないことは知っている。
ああでも、こんな忌まわしい土地に体を預けることは嫌だ。今思った。この土地に肉体を埋められるのは耐えられない。
我慢するしかないのか。
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